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長時間労働による労災事案があったとき

長時間労働・長時間残業にある社員が、
 脳や心臓疾患の発症、メンタルヘルスの不調を発症したとき、
  労災として認定されます。

過重労働(長時間労働)による疾病が労災と認定されたとき、事業主は金銭的にも社会的に大きな損失となります。

 過重労働(長時間労働)による疾病の発症は、事案に至る前に労働環境を改善すべき事柄です。
 しかし、実際には業務の都合や会社の方針等により、継続的に長時間残業等の過重労働状態にある者が多くいます。
 過重労働にある者が、その過重労働によることが原因と思われる疾病を発症した時について、労災認定と企業に対する影響等についてです。

・通常の労災事故との取扱いの違い
 通常の労災事故では、労災事故の隠ぺいは不法(不正)行為に該当するため、労働者側から特に手続きを行わなくても会社に申告するだけで労災事故として手続きを進めてくれる場合があります。
 しかし、過重労働による疾病では、疾病の発症前より企業側はその問題を認識した上で行っている。または、労務管理について優先順位の低い企業である可能性が大きいです。
 また、一見して業務との関連性がわかる受傷事故ではないため、本人及び家族等が労災認定に関する申し立てがないと、認定となることはほぼありません。

・労災に関する申し立て
 疾病が労災となるには、これを判断する労働基準監督署に対して申請を行う必要があります。
 通常は労災事故の申請は会社を通じてとなります。しかし、会社がこれを拒む場合には直接労働基準監督署に対して申請を行います。
 この時、疾病と業務の因果関係について申請書に記載し、これを証明しなければなりません。
 日数や時間数などが残業として給与に反映されている場合は直近の給与明細の写しを用意します。


・給与明細に記載されていない企業の場合
 裁量労働制・サービス残業、タイムカードの廃止等により企業側が予め長時間労働に関する問題を認識した上で意図的に立証し難くしている場合があります。
 この場合、長時間労働を証明することがかなり困難になります。立証には同僚等の証言などを得るなどの証拠集めが必要です。
 しかし、企業側が協力者に対して口止め、不利益等を与える恐れがあるため、現実にはかなりの困難が伴います。

・業務と疾病に関する因果関係
 労災申請がなされた時、労働基準監督署では疾病内容と勤務状況を確認しその因果関係について審査がなされます。

・対象となる疾病
 ・脳血管疾患
 ア.脳内出血(脳出血) イ.くも膜下出血  ウ.脳梗塞 エ.高血圧性脳症
 ・虚血性心疾患等
 ア.心筋梗塞 イ.狭心症 ウ.心停止(心臓性突然死を含む。) エ.解離性大動脈瘤

・認定基準
 異常な出来事(極度の緊張、恐怖、強度の身体的不可)、短期間の過重業務(出張、深夜業、精神的緊張等)、長期間の過重業務(長時間労働・長時間残業)についての過重負荷の存在。
認定基準の詳細は、
外部リンク:厚生労働省>「脳・心臓疾患の認定基準の改正について」厚生労働省発表 平成13年12月12日(水)
http://www.mhlw.go.jp/
houdou/0112/h1212-1.html


・行政処分等
 重大な労災事案となった場合、労働法違反による処分が適用されます。

・民事賠償等
 労働法違反にによる不法行為により損害を被ったとして、損害に対する賠償請求が行われる場合があります。

・労災に関する訴訟等による賠償の備え
 強制加入(政府)の労災保険は、最低限の補償です。
 民間の保険会社には労災事故で訴訟等に発展し、民事上の損害賠償など労災保険の適用範囲を超える時に備えた労災上乗保険が商品化されています。

・実際に該当する疾病が発生した時
 長時間労働が原因による労災が疑われる事案については、発生前に少なからず社内の労務担当者。労務士等による改善に関する助言等が行われています。
 このため、発生を全く予期していないということは、小規模で労務管理自体を深く考えない企業を除きほぼありえません。
 会社側が安全配慮に関する非を認めて早期に労災の申請手続きを行わない場合には、労災として会社側と争うためには相当の労力が必要となることが予想されます。
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